近代化と世間―私が見たヨーロッパと日本 (朝日新書)



近代化と世間―私が見たヨーロッパと日本 (朝日新書)
近代化と世間―私が見たヨーロッパと日本 (朝日新書)

ジャンル:歴史,日本史,西洋史,世界史
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「自己変革なくして社会の変化などありえない」

作者の著作を読むのはこれが初めてですが、ヨーロッパと日本のコミュニティの性格の比較から、両者の歴史認識の違い、世界観の違いが解き明かされています。
ヨーロッパの「小宇宙」に対する日本の「世間」の違いは、基本的には前者のは「個」があり後者には「個」ではなく「場」があるということでしょうか。それには、宗教観の違いがあり、前者は彼岸に死後を見ますが、後者は同じ地平に死後を見るということになります。その結果として、日本人は、「現在」を中心として歴史を見、「過去」も「未来」もその延長線上にしかなく、目標とか計画という考え方に馴染まないということでしょう。こうした日本の「世間」にヨーロッパの近代科学が導入された時、日本人の中に二重構造が生まれてしまったということになります。
そもそもこの本は、「いかに生きるべきか」を求めて書かれた本なのですが、結局は、「自己変革なくして社会の変化などありえない」と結ばれています。
「世間」という極めて日本的な環境を心の奥底に持っている日本人が、ヨーロッパ流の「近代化」と個々に折り合いをつけ、その結果として社会が変わってゆくということになるのでしょうか。
ヨーロッパ流の近代科学で捉えられない日本人の中にあるものを「世間」というカテゴリーに括って、解り易く書かれた著作ですが、最後の結論に至る部分は、ややジャンプしている感じが残りました。とは言うものの、なるほどと頷ける部分が多く、新鮮な感覚で読むことが出来ました。
内なる敵

 阿部謹也氏の本は何冊か読んだ。講演を聴きに行ったこともある。氏の話に引き込まれ感動しつつも、いつも問いかけたくなることがあった。「我々は今何をなすべきだとお考えですか?」と。
 氏が亡くなったのは昨年9月。まだ71歳。そのとき浮かんだのは、この「聞きたいことがあったのに」という思いだった。
 遺言となったようなこの本を読むと、いつになく氏の筆が震えているのに気付く。死を予感しての運筆のせいか。そしてそれとは逆に、いつになくクリアに私の問に答えてくれていると思った。それを読んで、「いや今までも繰り返し語っていたよな」と気付かされた。せっかちで迂闊な私が読みそこなっただけだった。
 我々に必要なのは自己変革である。「世間」に縛られた生き方から「世間」を越える生き方への。日本の歴史上でそれを実践した人物がいる。親鸞である。親鸞は呪術を排し、ひたすら念仏によって浄土への道が開けることを民衆に説いた。この主張の実践によって、ある意味非常に近代的で自由な信徒の世界が成立することになった。(と阿部氏は感動をもって述べている。)
 民衆の側に立って、「世間」を乗り越え、「学問」を取り戻すこと、それが氏の望んでいた未来であろう。その歩みを私たちは受け継いで行けるだろうか?
 問題は、その難敵が、我々自身の内側に巣食っているということである。



朝日新聞社
日本人の歴史意識―「世間」という視角から (岩波新書)
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